InDesign(インデザイン)のブックファイル
自動番号でノンブルを通す
InDesignでページ物の印刷物を作るとき、ページ数が多いとドキュメントを複数に分割して作業することになります。ドキュメントファイルの数が多くなると、ノンブルを通すだけでも結構な手間になります。途中のファイルでページが増減したときに、後のファイルに反映し忘れるといったリスクも少なからずあります。そういった場合に、複数のドキュメントをノンブルを含めて一括で管理してくれるのがInDesignのブック機能です。
ブック機能はInDesignのドキュメントファイルを登録してまとめた管理データをブックファイルとして保存します。このブックファイルを開くと、InDesignはそこに登録されている各ドキュメントファイルにアクセスし、ノンブルの更新や変更、スタイルの管理などを行うことができます。
ブックにドキュメントファイルが登録されていれば、ブックパネルに表示されているドキュメント名をダブルクリックすることでそのドキュメントを開くことができます。また、開いたファイルを保存するとノンブルなどがブックファイルにも反映されます。
登録された全ドキュメントに自動番号でノンブルを通して付けることが可能ですが、その際、偶数ページ始まり、奇数ページ始まりといった指定もできます(その場合、必要に応じて白紙ページが作られる)。また、自動番号を使わず、ノンブルを個別に指定することも可能です。
スタイルの同期
同じ印刷物であっても、ファイルが複数に分かれていると、スタイルや色の設定が違っていても気づかず、トラブルになることがあります。ブック機能を使うと、同じブックに登録されたドキュメントで使われているスタイルやスウォッチ、親(マスター)ページ、文字組み設定、テキスト変数などを同期させることができます。
どの要素を同期させるかは、ブックパネルの「同期オプション」で指定します。
複数のファイルにおいて異なるスタイルが設定されている場合、どのファイルを元に同期させるのかを指定しなければなりません。同期する元になるドキュメントをスタイルソースと言いますが、スタイルソースはブックパネル上で元になるドキュメントの左をクリックして指定します。
すべてのドキュメントでスタイルなどを同期するには、ブックパネルでなにも選択せず「ブックを同期」を実行します。また、特定のドキュメントだけを同期したい場合は、ブックパネルでドキュメントを選択し、「選択したドキュメントを同期」を実行します。
同期オプションで指定された要素は同期されますが、指定されていない要素は同期されません。なお、同期するアイテムがスタイルソースと異なる場合は上書き修正されますが、スタイルソースに存在しないものはそのまま保持されます。
注意しなければならないのは、単独ドキュメントでスタイルを変更していた場合、同期させることで変更部分が元に戻ったり、逆に思わぬところが変更されたりといったトラブルが起きる危険があるという点です。特に、複数で手分けして作業している場合などは、スタイルの変更はよほど厳格に管理しないとトラブルに直結してしまいます。
また、スタイルをグループで管理している場合はスタイルグループを含めて同期するという点も注意が必要です。たとえば、スタイルソースでAというスタイルグループの中にBというスタイルがあるとします。同期したドキュメントにもスタイルBはあるものの、スタイルグループAの中ではなく、グループ外に置かれていた場合、そのままだと同じスタイルとは認識されないため上書きではなく、スタイルグループAの中のスタイルBが新たに作られてしまいます。
この問題を解決するために、同期オプションには「スタイルグループをスマート一致」という設定が用意されています。この設定をチェックすると、同期するスタイルはスタイルソースにあるスタイルグループに移動して上書きされます。
ブックからの書き出し
同期以外のブックのもう一つの機能がブック単位の書き出し、出力です。
多くのドキュメントファイルがある場合、全部プリントやPDF書き出しするのは面倒で時間がかかるものです。ブックはこういった作業を効率化します。
ブックを使ったアウトプットとしては、「プリント」「PDF書き出し」「EPUB書き出し」があります。
プリント出力とPDF書き出しは、同じブック内の全ドキュメントを1つのファイルにまとめて書き出すほか、選択したドキュメントをまとめて書き出すこともできます。ドキュメントの数が多い案件で効率化が図れるでしょう。
また、プリント出力やPDF書き出しする場合、作業の前後にプリフライトやパッケージを行うことがよくありますが、これらの処理もブックパネルからブック全体に対して行うことができます。
ドキュメントが複数のファイルに分かれている場合に、ブック機能を使うと使わないとで大きく違ってくるのが目次と索引の作成です。
InDesignには、ドキュメントで使われているスタイルを使って自動的に目次を作成する目次機能と、InDesign上でキーワードを登録して索引を作成する索引機能が用意されています。しかし、これらの機能はドキュメント全体を網羅してこそ意味があるものであり、1つの本が複数ファイルに分かれていた場合、それぞれ個別に目次や索引を作るわけではありません。そこで、ブックに登録されたドキュメントについて、目次や索引の機能を拡張してブック全体から自動的に作成できるようになっています。
目次の場合は、該当するドキュメントファイルがすべてブックに登録されていれば目次の作成ダイアログで「ブックのドキュメントを含む」にチェックを入れるだけで、全体の目次が作成できます。
索引の場合は、該当するドキュメントをすべて開いたうえで、索引の作成ダイアログで「ブックのドキュメントを含む」にチェックを入れると全体をカバーする索引が作成できます。
(世木澤 2005.7.4初出)
(田村 2024.8.9改稿)