Adobe Bridge
ファイル管理ソフトとしての実力
Adobe Creative Suiteの第二弾であるCreative Suite 2にはさまざまな新しい機能が加わっていましたが、中でもアドビが最も力を入れていたのは「Adobe Bridge」でしょう。発売前からAdobe Bridgeを使ったプレゼンテーションが盛んに行われていました。ただし、アドビの意気込みに比べるとユーザーの反応はあまり芳しいものではなかったようです。
それは、一つにはユーザーの思い描くファイル管理ソフトのイメージとAdobe Bridgeの志向する使われ方に少なからぬギャップがあったからかもしれません。
しかし、Creative Suiteの今後の展開を考えると、Adobe Bridgeの重要性はこれから高まっていくことが予想されます。DTPアプリケーションが今後どのように進化していくのかを考える上でも、Adobe Bridgeについて改めて見直す意味はあるでしょう。
Adobe Bridgeにはさまざまな機能が用意されていますが、最も基本的な機能といえば、やはりファイルの閲覧・管理機能でしょう。Creative Suite 2で初めて登場したAdobe Bridgeですが、その前身は、Photoshop 7やCSに備わっていた「ファイルブラウザ」という機能です。ただしPhotoshopのファイルブラウザは、当然ながら画像だけのビューワでしたが、Adobe Bridgeでは画像だけでなく、IllustratorやInDesignのデータ、さらにPDFもページ単位でプレビュー表示することができます。
また、Adobe Bridgeからファイルをアプリケーションにドラッグ&ドロップして開いたり画像ファイルをドキュメントに貼り込むといったことも可能ですが、そういった作業のために、Adobe Bridgeにはファイルのプレビューをコンパクトに表示するコンパクトモードが用意されています。Adobe Bridgeを常に前面に表示させることもできるので、InDesignやIllustratorのフローティングパレットのような感覚で使うことができます。
ファイル管理ソフトとして見た場合、Exifなどのメタ情報の表示はもちろん、五つ星までのレーティング(格付け)やカラーラベル、キーワードなどを使ったファイル整理、さらにファイル情報やキーワード、レーティング、ラベルなどさまざまな条件による検索や並べ替えといった機能が用意されており、画像専門のビューワにも負けないだけの操作性は確保されています。
デジタルカメラのRawファイルに対応している点も重要なポイントでしょう。ファイル名をバッチ処理で変更する機能も、実際の仕事で役に立つ機能です。そのほか、画像販売サービス「Adobe Stock Photo」の窓口としての機能も備わっています。
Adobe製品のコントロールセンターとして
Adobe Bridgeが他のファイル管理ソフトと大きく違う点は、Adobe製品との連携にあります。InDesignやPhotoshop、IllustratorからAdobe Bridgeを呼び出したり、逆にAdobe Bridgeでファイルを選んで開くといったことはもちろん、Adobe BridgeではAdobe製品の機能を利用した色々な処理もできるようになっているのです。
たとえば、画像ファイルを選択し、Photoshopの機能である「HDRに統合」や「Photomerge」「イメージプロセッサ」「コンタクトシートII」といった自動処理を実行したり、Illustratorの「Live Trace」処理や、InDesignでコンタクトシートを作成することもできます。もちろん、結局はそれぞれのソフトが起ち上がって処理をするのですが、ファイルのブラウザ画面上で処理の指定ができるということが作業の効率アップにつながるわけです。
ファイル管理だけでなく、アプリケーションの管理もAdobe Bridgeの重要な役割となっています。最近はカラーマネージメントが盛んに言われるようになり、カラー管理の重要性が高まっていますが、作業に関わる全てのソフトのカラー設定を統一するのは意外に面倒な作業です。Adobe BridgeにはCreative Suite 2の各ソフトのカラー設定を一括して指定する機能が備わっています。
また、Creative Suiteの将来的な進化を考えた場合に忘れるわけにいかないのが、バージョンと代替ファイルの表示機能でしょう。
Creative SuiteにはVersion Cueというユーティリティが付属しています。このユーティリティを使うと、一つのデータに複数のバージョンを格納することができ、いったん保存したファイルでも前の段階の状態に簡単に戻ることが可能になります。
Adobe Bridgeを使うと、Version Cueで保存されたファイルのバージョンを閲覧し、選択して開くことができます。これまでは、そのアプリケーションで最新バージョンを開いてからでないと前のバージョンにアクセスすることができなかったのですが、Adobe Bridgeを使えば、個別のファイルと同じようにバージョンを操作することができるわけです。
さらに、「代替」という新しい機能も利用することができます。この機能は、あるファイルの代替ファイルとして別のファイルを登録することで、ファイルを簡単に差し替えることができるようになるというものです。代替ファイルの指定はAdobe Bridge上で行うことができます。たとえば画像をInDesignに貼り込み、代替ファイルに差し替えたい場合は、リンクパレットのメニューで代替案(代替ファイルの一覧)を表示し、「再リンク」を実行します。
Adobe Bridgeの可能性
Creative Suite 2の新しい機能をフルに活用するユーザーにとってはかなり有効なビューワと言えるAdobe Bridgeですが、あまり利用されていないのは、そういった新しい機能自体がまだ十分ユーザーに浸透していないというのが大きな原因でしょう。デジタルカメラのRawデータやAdobe Stock Photoサービスをよく利用し、Version Cueを常に使って作業するといったユーザーは確かにまだまだ少数です。
また、Adobe Bridgeそのものがかなり重いブラウザだというのも敬遠される理由になっているかもしれません。一般的な画像ビューワは軽快な操作性でしのぎを削っていますが、Adobe Bridgeは多くの機能を備えたことでビューワとしては例外的なほど重くなってしまっています。
今後、Adobe Bridgeがユーザーに広く活用されるようになっていくためには、バージョン管理などCreative Suite独自の機能が一般に受け入れられていくことと同時に、マシン性能の向上やAdobe Bridgeそのもののスピードアップが必要になるのではないでしょうか。
(田村 2007.1.15初出)
(田村 2016.5.25更新)