電子書籍とは何か
電子書籍におけるレイアウト
企画の段階から判型があらかじめ決まっている印刷書籍と違い、電子書籍は基本的に判型という概念はありません。デバイスによって画面のサイズはまちまちなので、どのサイズの画面でもそれなりに読めるようなレイアウトが必要になってくるのです。
画面サイズが変わっても読みやすさが維持できるようにするには、Webブラウザのように画面が変わると一行に入る文字数も変わるという方法がベストです。この方法であれば、文字サイズを変更することも可能になります。こういったレイアウト可変のやり方をリフロー型とも言います。
ただし、図版の配置位置などが重要な書籍の場合、判型がバラバラということではレイアウトが困難なケースもあり得ます。そういった場合は、特定のデバイスを想定し、その画面サイズにあわせてレイアウトすることになります。レイアウトは固定となり、大画面のデバイスに最適なレイアウトで作られた書籍は小さなデバイスだと快適に読めないということもありますが、部分的な拡大などの機能を利用する、あるいはリフロー型と使い分けるなどで多少なりとも読みやすさを確保するしか仕方ありません。
リフロー型レイアウトと固定レイアウトのそれぞれのメリットと制作工程の違いを以下にまとめておきます。
リフロー型レイアウトのメリット
・どんなデバイスの画面でも読みやすい
・文字サイズを自由に変えることができる
・HTMLのデータを利用しやすい
固定レイアウトのメリット
・図版の位置を正確に指定でき、制作者の意図したデザインが再現できる
・ページという概念が利用できる
・印刷用データをそのまま流用できる
制作工程の違い
・固定レイアウトはInDesignやPDFデータから書き出す。そのためDTP作業が前提となる。
・可変レイアウトは、HTMLやXMLといったマークアップ言語で作る。そのため、Web制作に近い作業を行う。
これまで印刷物を作ってきた人にとって、思い通りのデザインを実現できるというのは必要不可欠の条件であるように思われるかもしれません。しかし、電子書籍の世界では、電子書籍を読むデバイスのサイズを限定しない限り、デザインの質を保証できないわけですから、よほどページ全体のデザインを維持しなければならない場合を除くと、リフロー型を採用するほうがいいでしょう。
ただし、リフロー型で出版する場合、従来のやり方が使えないため不便な点も出てきます。従来のやり方では、DTPでレイアウトしたものをプリンタで出力し、校正を何度も繰り返してミスや問題点をつぶしていきます。この工程は出版物の品質を維持するためには不可欠の作業であり、DTP作業がないリフロー型だからといってこの工程を省いてよいわけではありません。リフロー型の場合、画面で確認するということは可能ですが、画面での確認は校正としては不十分なものでしかないのです。
この問題を解決するには、リフロー型でもいったんInDesignなどで仮レイアウトし、プリンタ出力して校正を行うという工程を組み込む必要があります。もちろん、InDesignでの処理はあくまで校正を行うためだけの仮のものですから、デザインに凝るといったことは不要です。