電子書籍とは何か
データ形式
汎用書籍フォーマットとアプリ
スマートフォンやタブレットでは、書籍を単独のアプリとして提供するという方法があります。
この方法には、
・独自の機能を自由に付加できる。
というメリットがあるものの、一方で、
・制作コストがかかる
・デバイスごとに別のバージョンを作る必要があり、OSのバージョンアップなど場合によっては
データを販売した後でアップデートも必要になってくる。
といったデメリットがあります。アプリ型書籍はiPadがブームとなった2010年から2011年にかけて実験的な意味も含めて盛んに企画され、発売されましたが、ベストセラーでも数万部がせいぜいという電子書籍でアプリの開発費まで含めて利益をあげるのはなかなか難しく、今後は単価の高い、ある程度利益の幅を見込めるもの以外は汎用のフォーマットで出版されるというのが一般的になるでしょう。
一方、電子書籍のフォーマットとしてはPDF、HTML、EPUB、XMDF、.book、MCB、AZW、Amazon Formatなどがあります。こういったフォーマットの書籍は、基本的には書籍データだけを販売し、デバイスにインストールされている閲覧用ビューワで見るため、制作するのは書籍のコンテンツだけです。
このうち、PDFはレイアウト固定の書籍になります。また、HTMLはパッケージ化されているわけではないためここでは電子書籍としては考えないことにします。
XMDFと.book形式は、これまで日本の電子書籍で一般的に採用されてきたフォーマットです。また、MCBは日本のDTPフォントで圧倒的なシェアを誇るモリサワが開発したフォーマットで、文字組版に定評があります。これらは事実上日本限定のフォーマットといってよいでしょう。
一方、AZW(Amazon Format)はアマゾンのKindleで採用されているフォーマット、EPUBは国際電子出版フォーラムが制定したフォーマットで、いずれも国際的に幅広く使われています。
どのフォーマットを採用するかは、どの流通ルートで配信するかということと密接に関わってきます。旧来からある電子書籍販売サイトの多くはXMDFや.bookを中心にラインアップを揃えていますが、最近はEPUBの採用も進んでいます。新たに登場してきたサイトはEPUBを採用しているものが多く、また、アマゾン社はEPUBをKindleフォーマットに変換するツールを提供しており、通常はEPUBを用意してKindleフォーマットに変換することになります。
多くのフォーマットを用意するのは手間がかかりコストがかさむだけでなく、トラブルの危険も高くなります。現状でEPUBがかなりの広がりを見せていること、今後はさらに広がっていくであろうことを考えると、電子書籍のフォーマットはEPUBを中心に考えるべきでしょう。