電子書籍とは何か
電子書籍の販売
電子書籍は、自社のWebサイトでの直販のほか、電子書店と呼ばれるサイトで販売されます。電子書店には現在さまざまなものがあり、今後も続々と登場することが予想されます。
電子書籍は、従来の紙の出版物とは大きく異なる特徴を持つため、その販売方法も自ずから異なるものが求められます。紙と同じやり方では十分な効果を挙げられないのです。
電子書籍の販売における問題としては、
・デバイスに依存するフォーマット
・読者に紙に優る体験を提供できるか
・告知・広告をどうするか
といったものがあります。
電子書籍を読むにはデバイスが必要になります。そのデバイスはこれまではパソコンでしたが、今やタブレット、スマートフォン、専用端末など数多くの種類があります。特定のデバイスでなければと読めないということでは、販売に支障が出るだけでなく、デバイスのバージョンアップなどによっては販売後のサポートも必要になるなどコストの増大要因になりかねません。
リフロー型フォーマットを選べば、デバイスに依存しない販売が可能になりますが、その場合でもレイアウトの制約は存在しないわけではありません。図版が入るものであれば、小さな画面で図版をどのように見せるかといったことまで考えなければならないのです。もちろん、大きなタブレット向けに限定して販売することを前提で作ることもできますが、それは読書をするために特定の環境を整えることを読者に要求することであり、大きな共感は得られないでしょう。
つまり、電子書籍では、紙の出版物とは別の意味で注意深くレイアウトデザインしなければならないということになります。ただし、そういった作業を行った経験があるデザイナーやオペレーターはほとんどいないというのが現状では大きな問題です。当面は編集者が主導して基本となるレイアウトを作っていく必要があるでしょう。
次に、紙に優るものを作るというのが重要になります。電子書籍は単なる紙の出版物の代用ではありません。それでは結局は新しもの好きが買うだけに終わってしまうでしょう。紙と比べて電子書籍ならではのメリットを感じられるような商品を作らなければ、思ったような売上をあげることはできません。
電子書籍ならではの機能を加えるには、アプリ化というのもひとつの方法ですが、コストがかかり過ぎるという欠点があります。汎用フォーマットであるEPUBでも、工夫次第で紙にない魅力を付け加えることは可能です。ただし、コストをかけずに電子書籍の商品価値を高めるには、電子書籍に関する豊富な知識を持った人間が企画から実作業まで全体のハンドリングをする必要があります。
最後に、出来上がった電子書籍をどのように読者に周知し購入してもらうかという点が問題になります。従来は、新聞や車内広告などを使って宣伝するのが一般的でした。また、書店で売られていたため、書店の棚に置かれているだけでも大きな宣伝になっていました。
電子書籍の場合、インターネットで販売されるため、どこで売られているかというのがもっとも重要な情報であり、宣伝もインターネット経由で行うのが効果的です。また、発行部数という概念がない(その時点での販売部数しかない)ため、どれくらいの費用をかけてどのように宣伝するかというのは未知の領域になってきます。
現在注目されているのはソーシャルメディアを使う方法です。これはFacebookやmixiなどのSNSやTwitterなどのメディアを使って宣伝を行うというもの。そのほか、Amazonのカスタマーレビューや書評サイト、ブログなども効果的です。さまざまなメディアが存在しており、それぞれ特性も異なるため、書籍のコンセプトや読者層に応じてメディアを使い分けることが必要になってきます。
これまで、出版社は出版物のマーケティングに十分力を注いできたとは言えません。むしろ「いいものを作れば売れる」「求められているものを作れば売れる」というのが従来の基本的なスタンスだったわけです。しかし、電子書籍時代は、ニーズのある層にどれだけ周知させるかがこれまで以上に重要になってきます。