電子書籍とは何か
印刷物との連携
電子書籍を出版する場合、印刷物との関係によって制作方法や販売の方法が変わってきます。
たとえば、印刷物を先に作り、その後で電子書籍を作るというケースがあります。既存書籍の電子化はこのパターンですが、この場合、DTPデータが残っていればDTPデータを元に電子書籍を作ることになり、なければ文字入力から行うことになります。
一方、今後は印刷書籍と電子書籍を同時に作ることも増えてくるでしょう。このパターンであれば制作ワークフローを連携させることで省力化、低コスト化を図ることができます。
さらに、今後は電子書籍をまず作り、評判を見て印刷書籍を作るというケースも出てくるでしょう。実際、アメリカではこのやり方が増えつつあります。出版の大きな問題点として、どれだけ売れるかが分からないため、見込みを間違えると売れ残りが多く出てしまうということがります。電子書籍であれば売れ残りが出る心配がなく、しかも評判を見て印刷部数を調整することで売れ残りを防ぐことができるわけです。
DTPデータから電子書籍を作る場合、電子書籍化を念頭においてレイアウトされたものでないかぎり、電子化にかなり手間がかかることがあります。紙にきちんと印刷されればデータの作り方は問われないDTPと違い、電子書籍はデータそのものであり、見た目だけでなくどのように作られているかも重要なのです。
印刷書籍と電子書籍を同時に制作する、あるいは電子書籍を先に制作する場合、制作の工程をある程度共通化、自動化することができます。これによって、コストを削減できるだけでなく、トラブルをできるだけ少なくすることも可能です。ただし、そのためにはただ単に同時に作ればいいということではなく、DTP制作、電子書籍制作のどちらにも精通した人間がワークフロー全体に関わることが必要になってきます。
具体的には、印刷用データをどのように作れば電子書籍との連携が図れるかという点が重要です。これまでのDTP作業は、ともすれば昔の版下作成をデジタル化しただけに過ぎず、コンピュータならではの自動処理というメリットを活かしきれていませんでした。仮に、印刷書籍と電子書籍をこれまでのような作業で作るとすると、原稿は同じであってもそれぞれ別の組版処理や校正、修正といった作業が必要になり、しかも別々の作業で作るとなるとコンテンツの同一性も保証できないことになってしまいます。
印刷物と電子書籍の連携を最大限に図るのであれば、データの処理をできる限り共通化していくことが重要になってきます。理想的には、ほとんどの処理を共通化し、最後の最後で印刷データと電子書籍データに出力するという形が望ましいわけです。