特殊な“ノンブル”の配置方法
InDesignのノンブルの振り方
我が国の出版・印刷業界ではページの番号を、フランス語で「数」を意味する「ノンブル」と呼ぶのが一般的です。なぜフランス語なのかは措くとして、その求められる機能について考えてみます。
ノンブルはページ物印刷物において位置を特定する際に必要なものであり、それだけに、ページをパラパラとめくった場合にも目に入るように目立ち、しかも読むときには内容の邪魔にならないことが求められます。
そのため、ノンブルは、文章が入る領域である版面(はんづら)の外、つまり余白の部分に常に一定の位置で配置されます。
また、ページの番号は常に連続しており、途中で順番が変わったり重複あるいは間を抜かすということがあってはなりません。そこで、ページ番号を振る順番や位置などを間違えることがないよう、ノンブルの配置はレイアウトソフトの自動配置機能を使うというのが原則です。
InDesignの場合、ノンブルは基本的にマスターページで管理されます。マスターページにノンブルを配置することで、常に同じ位置が得られ、しかも振り忘れも生じないわけです。
InDesignのノンブルの機能では、適用するマスターページの使い分けによってドキュメントページ上のノンブルの書体や位置を変更することもできます。複数のマスターページを作り、それぞれでノンブルの配置場所や書体を変えておけばいいのです。その場合も、ノンブルの数値そのものは自動的に通すことができます。ノンブルのフォントが途中で変わるというような印刷物はあまりないでしょうが、裁ち落とし画像を入れたためノンブルの色を白抜きにするなど書式の使い分けが必要なケースはあるでしょう。
本によっては、1冊の中で目次やまえがきなどに、本文のページと異なるノンブルを振ることもあります。また、章ごとにノンブルを分け、例えば1章は1-1、1-2…、2章は2-1、2-2…といったような形にすることもあります。
InDesignでは、ひとかたまりのページをセクションと呼びます。任意のページでセクションを開始させることでノンブルをそこでリセットさせたり、セクションプレフィックス、セクションマーカーといった機能を使うすることで、ノンブルにセクション単位で文字を追加することも可能です。
なお、ノンブルの数字には、アラビア数字を使うのが一般的ですが、それ以外にローマ数字や漢数字を使うこともあります。InDesignでは、ノンブルのスタイルとしてアラビア数字、ローマ数字(大小文字)、漢数字、さらにアルファベット(大小文字)を指定することができます。
自動処理できないノンブル
InDesignのノンブルの自動配置機能は便利な機能ですが、どんな場合でも対応できるというわけではありません。特殊なケースでは使えないこともあり得ます。
たとえば、ノンブルの形がInDesignで用意されていないケース。ノンブルに漢数字も使えるとはいえ、壱、弐、参…といった漢字(大字)には対応していません。また、数字ではなく、one、two、three…といったように単語で表記する場合もノンブルの自動機能は使えないのです。
こういった場合、自動で処理することをあきらめて、ドキュメントページで1ページずつ配置するということもできますが、それだと、手間が掛かるだけでなく、配置する位置がずれたりノンブルが重複あるいは飛んでしまうというトラブルが起きかねません。
特に、修正によってページの増減や入れ替えが生じる場合はかなり注意しなければ危険です。
こういった場合に、各ページに手作業で特殊なノンブルを入力するのではなく、別に用意したノンブルのテキストを流し込むことで、手間を軽減し、なおかつある程度トラブルを防止することができる方法を紹介します。
その手順は以下の通りです。まず、マスターページでノンブルが入るテキストフレームを配置します。見開きで作る場合は左右のページのテキストフレームを連結しておきます。テキストフレームの高さのサイズはノンブルが1行だけ入るように調整します。
次にドキュメントページの最初に移り、あらかじめ用意しておいたノンブルのテキストデータを配置コマンドで読み込み、Shiftキーを押しながらノンブルのテキストフレームをクリックします。なお、テキストデータはノンブルごとに改行しておきます。
マスターページ上に置かれたテキストフレームは、通常はドキュメントページ上で操作できませんが、Shiftキーを使えば、テキストを流し込めるだけでなく、テキストデータがあふれた場合は自動的にページを増やして最後まで流し込むことができます。
流し込まれたテキストは、通常のテキストと同様にひとつながりの状態を維持していて、たとえばページを削除した場合は次のページに流し込み直されるため、ページの増減にも一応は対応できます。ただし、ページの順番入れ替えには十分な注意が必要です。「テキスト連結」を表示してノンブルの流れを確認するのが効果的です。
なお、特殊ノンブルを左右ページで位置を振り分けて配置したい場合、段落の揃えで「ノド元に向かって」や「ノド元から」を選ぶか、スタイル機能で「次のスタイル」を指定して適用するといった方法があります。
いずれにしても、ノンブルの場合、ユーザーが手で配置・入力していくというような作業は出来る限り避けることが、手間を掛けずに安全なデータを作る上で大切な要素になってくると言えるでしょう。
(田村 2009.3.2初出)
(田村 2023.10.2更新)